
デジタルセールスに移行するためのMarketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)の効果的な活用方法
Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)を利用することで、顧客ごとに最適なメール配信や、商談につながる提案を行うためのベストなタイミングを検知することができます。しかし、実際にどのようなフローで設計を行えば良いのでしょうか。この記事で詳しく解説します。
目次[非表示]
- 1.ナーチャリング施策の全体像
- 2.Pardotを利用することで解決できる課題
- 2.1.1. 営業のタイミングによる損失を防ぐ
- 2.2.2. アナログ作業の工数を大幅削減
- 3.Pardotの効果的な運用に必要なものとは
- 4.まずはコンテンツ内容を考えよう
- 5.新規リストイン後のフォロー(ステップメール)
- 5.1.フォームの「課題」項目に応じてナーチャリング
- 5.2.シナリオ例
- 5.3.休眠リードのナーチャリング(メルマガ)
- 5.3.1.ステップ
- 5.4.コンテンツ例
- 6.失注商談リードのナーチャリング(ロータッチ)
- 7.閲覧通知の活用方法
- 7.1.設定方法
- 8.ダッシュボードの活用方法
- 8.1.1.実行後のチェックポイント
- 9.ダッシュボードで施策の効果測定をする
- 10.まとめ
Pardot(パードット)は、Salesforceと一体型のMA(マーケティングオートメーション)ツールです。顧客の情報を管理・分析し、マーケティング活動とセールス分野を融合させ、効率的かつ効果的な営業活動をサポートします。
実際にPardotを利用している方の中には、機能を最大限活用できているか不安な方もいるのではないでしょうか。この記事では、Pardotを使ったナーチャリングにおいて重要な機能や、効果を引き出す活用方法をご紹介いたします。
ナーチャリング施策の全体像
上の図は、リード獲得からインサイドセールスによる架電、フィールドセールスによる商談を経て、受注を達成するまでの全体像です。
その中で、インサイドセールスによる架電でアポイントに繋がらなかった顧客や失注となってしまった顧客へのナーチャリング・リードリサイクルにPardotが活用されます。
Pardotを利用することで解決できる課題
では、前述のナーチャリング施策の全体像を踏まえたうえで、Pardotを利用することで解決できる課題とは何かを解説いたします。
1. 営業のタイミングによる損失を防ぐ
「自社のサービス・製品を提案したが、予算が取れるタイミングではなかったため成約に至らなかった」
「タイミングの差で、顧客が競合他社のサービス導入を決めてしまった」
このような失敗事例からわかるように、客先の検討時期に合わせて提案を行うことが非常に重要です。
Pardotなら、過去に提案を行った顧客が自社サイトに再訪した時など、「顧客の検討状況が動いたタイミング」を検知する仕組みを作ることでこの問題を解決できます。
2. アナログ作業の工数を大幅削減
休眠・見込み顧客へのメール配信を、営業管理ツールから顧客データを抽出して行っているという企業も多いのではないでしょうか。
このようなアナログ作業を人力で行っていると、ヒューマンリソースを割いてしまうだけではなく人為的なミスも発生しかねません。
Pardotなら、salesforceと連動したメール配信機能によって、このようなアナログ作業の工数を大幅に削減することができます。
Pardotの効果的な運用に必要なものとは
Pardotを運用するうえで、必要な要素を5つご紹介いたします。
1から順番に着手することで、Pardotの強みを引き出す効果的な運用が期待できるでしょう。
1. ペルソナ・カスタマージャーニーマップの作成
顧客の目線で、情報収集から意思決定までの具体的な流れを設定します。誰に・何を・いつ・どのように届けるのかをここで決めましょう。
2. Pardot・salesforceの初期設定
salesforceのリードレイアウトと商談レイアウトに情報がストックできるように再設計を行います。合わせて、Pardot側も「トラッキング」「formの埋め込み」「メール設定」といった初期設定を実施します。
3. インサイドセールスの運用ルール設定
社内で、既存リードの扱い方やインサイドセールスのsalesforce・Pardot運用ルールを設定します。
4. 優先度の高いシナリオを準備
カスタマージャーニーに基づき、コンテンツ設計と作成に入っていきます。シナリオの中でも優先度の高い「新規コンバージョン後のナーチャリング」「休眠中リードへのナーチャリング」を設計しましょう。
5.施策の効果測定と改善
効果的に運用するには、分析も大切です。コンテンツごとの開封率・クリック率・反応率・商談化率を測定し、コンテンツを改善していきましょう。
まずはコンテンツ内容を考えよう
全体の流れを掴んだところで、さっそくコンテンツ内容の作成に取り掛かっていきます。実際に、セミナーやホワイトペーパーの内容を決める際のステップを解説します。
1.ターゲットと各ターゲットが持つ課題のリストアップ
まずはターゲットと、それぞれのターゲットが持つ課題を洗い出してみましょう。ターゲットが持つ課題は、営業に聞くのが確実です。インサイドセールス、フィールドセールス、マーケティングチームでミーティングを行いターゲット顧客の具体的な課題を共有します。
この段階では、粒度を問わずとにかくリストアップして網羅することを目指しましょう。
課題の共有だけでなく、セミナーやホワイトペーパーが完成した後も営業に内容を展開します。ターゲットに対してふさわしい言葉遣いになっているか、課題に対する間隔がずれていないかをフィードバックしてもらい、精度を上げましょう。
2.精査作業を行い優先順位を決める
続いて、① 自社サービスとの親和性、② ターゲットの数などを参考に、優先順位を決める精査作業を行います。また、特定の企業ではなくても、狙い目となる業種や業界ならではの課題をテーマとして取り上げるのも一つの手法です。
3.施策実行後にやめる施策と、継続施策を判断
実際にセミナーやホワイトペーパーを公開し、集客を実施します。施策実行後、顧客の反応を分析し、止める施策と継続する施策を判断しましょう。
運用が安定し、コンバージョン数が一定獲得できるようになれば、商談化数や案件化数でリードの質を検証できるようになります。
新規リストイン後のフォロー(ステップメール)
コンバージョンした顧客のうち、ホットリードと呼ばれる「今すぐ購入顧客」は全体の10%程度と言われています。残りの90%は「興味はあるけど検討中」という見込み顧客です。見込み顧客の興味をさらに引き上げ、商談につなげるにはステップメールの設計が重要になります。
見込み顧客へ、適切なタイミング、適切な内容でアプローチをすることで態度変容を促すことができますが、それには最低5回はユーザーがサービスに接触する機会が必要です。
ステップメールを用いたナーチャリングにおけるPardotの活用方法をご紹介します。
フォームの「課題」項目に応じてナーチャリング
Pardotなら、フォーム項目「抱えている課題感」に入力された内容に応じてナーチャリングができます。どの課題を回答したかによって、シナリオを分岐させましょう。特定されている潜在ニーズに基づき、それを顕在化させる内容のメールを送付します。
ステップメールのメリットは、ユーザーが情報を求めているタイミングでアプローチができる点です。
カスタマージャーニーマップを作成し、最適な配信タイミングとコンテンツが設計できていれば配信スケジュールも決めやすくなるでしょう。これによって、押しつけ営業にならない、ナーチャリングとしてのステップメール配信が可能です。
シナリオ例
「抱えている課題感」の項目で「BtoBマーケのノウハウが欲しい」と答えた方は、情報収集の意味合いが強い傾向があると判断します。より潜在層向けの「BtoBマーケティング実践セミナー」をステップメールで案内しました。
休眠リードのナーチャリング(メルマガ)
休眠リードのナーチャリングには、定期的なメルマガ配信が効果的です。メールマガジン配信の手順とコンテンツ例を解説いたします。
ステップ
1.メーリングリストを作成する
2.コンテンツを配信し、コンバージョンを獲得する
メールを読んでもらうだけではなく、ホワイトペーパー・セミナー・サービス紹介資料などにコンバージョンしてもらうことが大切です。コンバージョンからcookie情報を取得することで、顧客の検討レベルが引き上がったタイミングを検知できるようになります。
リードの状態によってアクションを変えるのも効果的です。
リードの状態 |
アクション |
狙い |
ニーズ不明 (例:名刺交換をした人) |
自社への興味を引きつけるため/より詳細な属性情報を取得するためのメール配信。 |
セミナーへの誘導・ホワイトペーパーのDL。 フォーム入力で属性情報を取得する。 |
潜在ニーズが特定できている(例:ホワイトペーパーDL済) |
より顕在化したアクションへ誘導するメール配信。 |
資料請求、問い合わせなどへ誘導する。 |
顕在ニーズを明確に持っている(例:資料請求・問い合わせ済) |
アプローチのタイミングを検知するメール配信。 |
追加情報を送り、「重要ページを見ている」などの検討アクションを検知し架電する。 |
3.架電後ヒアリングした顧客の課題を分類、必要な情報をまとめる
サイトの情報では全てを伝えることはできません。顧客の課題を直接聞き出し、課題を整理して、顧客にとって必要な情報をまとめてアクションを決定します。
4.顧客の課題ごとにあったメールテンプレートの作成
顧客の課題に合わせて、メールテンプレートを少なくとも3種類は作成しておきます。(例:①セミナー紹介 ②事例紹介 ③サービス紹介)
5.運用ルールの策定
どのようなフローで顧客をナーチャリングしていくかをまとめて、ルールを設定します。
コンテンツ例
まだ商談に至っていない顧客には、カスタマージャーニーに併せて各フェーズに適したコンテンツを作っていく必要があります。
メールマガジンで、営業色の強めのサービス紹介資料やデモトライアルなどを配信しすぎるとオプトアウトも増えてしまいます。ホワイトペーパーやセミナーを重点的に活用するといった工夫をしましょう。
失注商談リードのナーチャリング(ロータッチ)
失注商談リードのナーチャリングも重要です。
BANT条件に「3ヶ月以内にサービス導入可能」を含めている場合の、商談没後の流れの例をご紹介いたします。
- 商談失注3ヶ月後、ステップメールが配信される。
- 配信頻度は45日ごと。配信のたびに内容も切り替わる。
配信のタイミングは一例です。自社のリードタイムや、BANT条件と照らし合わせて決定しましょう。また、失注商談リードのナーチャリングでは、必ず商談獲得数目標もセットで考えます。
ステップ
1.失注商談リードのカスタマージャーニーマップを作成
失注商談リード向けのカスタマージャーニーマップを別途作成します。失注後の顧客が、3ヶ月単位でどのような行動を起こすかを具体的に図解しましょう。
2.カスタマージャーニーマップを元にステップメール作成・配信
カスタマージャーニーマップにそって、セミナー誘導・お役立ち記事の案内・サービス紹介資料の送付などのメール配信を行います。
3.次回どのタイミングでアプローチするべきか運用ルールを決める
失注商談リードのナーチャリングは、アプローチのタイミングが大切です。顧客の中には、メールを開封しない方もいます。メールを開封した顧客とは別に、アプローチのルールを決めるようにしましょう。
コンテンツ企画方法
失注商談リードナーチャリングのコンテンツ企画方法を2通りご紹介いたします。
方法①失注理由や導入ネックをグルーピングし、テーマを企画
失注商談リードは新規顧客ではなく、一度商談をしてサービスを知っている顧客です。だからこそ、サービスとマッチしなかった課題感や、導入をしない理由がすでに明確なはずです。
その理由を払拭するための、具体的な内容を考えてみましょう。
方法②サービスの最新機能を届けるハンズオンセミナー
サービスの追加機能や最新情報を伝えるハンズオンセミナーを実施します。既存サービスの機能や内容が失注理由だった場合に効果的な方法です。
顧客の、「新しい機能のことは知りたい」というニーズを拾うことで、再度接点を持つことができます。
閲覧通知の活用方法
顧客の検討状況の変化をつかむために効果的な、閲覧通知の活用方法をご紹介いたします。
提案時には、検討時期が未定だった商談が、顧客側での予期せぬ状況の変化によって検討時期が早まるというケースがあります。
閲覧通知を活用することで、そのタイミングを逃さないように、優先的に検知することが可能です。
(例)
- メール開封時に通知が来るように設定
- サイト再来訪時に通知が来るように設定
設定方法
Pardotなら、Slackなどのチャットツールとの連携が可能です。
コンバージョン後5分以内の素早い架電、営業からのアプローチが行えるようになります。
閲覧通知の設定方法を手順で解説いたします。
1.Slack側で設定を行う
詳しい設定方法はこちらをご参照ください。Slack側にAppを作り、Tokenを取得します。
2.Pardotのコネクタで、完了アクションにSlack通知を追加する
コンバージョンポイントに合わせて、Slack通知を送るチャンネルを変えることもできます。
3.Pardotのページアクションで設定する
Pardotのオートメーション>ページアクションで、「どのページに再訪問したら通知を飛ばすか」を設定します。
URL設定を「https://example.com/*」にすると、サイト全体を指定することができます。
ダッシュボードの活用方法
続いて、失注リードの追客状況を可視化する、ダッシュボード機能の活用方法です。ダッシュボードの見方からご説明いたします。
①アポ取得データ
失注商談のリサイクルによって、何件アポを獲得できたのかをグラフで把握します。
②アプローチ状況の管理
失注商談でアプローチすべきリストの数や、架電状況の進捗を把握します。
③直近のアプローチ案件
架電ができるように、案件名・設定しているネクストアクションの日時と内容・失注理由を一覧でリスト化しています。
1.実行後のチェックポイント
メールマーケティングを実行したら、
- 開封率
- CTR
- CVR
を確認しましょう。特にCTRの数値が重要です。
2.想定した数値に達していない場合
想定した数値に達していない場合のトラブルシューティングです。
開封率に問題がある場合 |
・顧客の興味引くメールのタイトルになっているか ・開封されやすい曜日/時間帯に送信しているか |
CTRに課題がある場合 |
・タイトルと本文の内容は一致しているか ・メールの本文だけで訴求内容を完結させていないか ・メールの本文はコンパクトにまとめ、CTA誘導後のLP内で完結させる設計になっているか ・興味を引く内容やボタン装飾でCTAへ誘導しているか |
CVRがある場合 |
・メール内容とLP内容が一致しているか |
ダッシュボードで施策の効果測定をする
メールマガジンごとの効果測定は、Pardot内のレポートで開封率・クリック率といった重要指標を確認することができます。
チャネル別、キャンペーン別でパフォーマンス比較
チャネル別パフォーマンス比較
- チャネル別に、リード件数/商談件数/案件化数/受注を把握できます。
- リード獲得数全体のうちのメールの割合も確認することができます。
キャンペーン別パフォーマンス比較
- メールマガジンの中でも訴求やコンバージョンポイント別で区別して、リード件数/商談件数/案件化数/受注を把握できます。
このように、ダッシュボードをうまく活用することで追客状況をリアルタイムで可視化し、施策の効果測定も実施することができます。
まとめ
Pardotを活用して効果的な営業フローを設計する方法を、具体的な操作方法も含めて解説いたしました。
受注に繋がる営業のコツは「ニーズ」と「タイミング」です。失注してしまった顧客は失敗ではなく、ニーズが合うタイミングを的確に狙うことで再度リードとして商談が設定できる可能性を持っています。
Pardotの機能を最大限活用し、検討状況の把握、ベストなアプローチを行って営業活動の効率を上げていきましょう。
この記事を読んだ上で、わからないことやもっと知りたいことがある方は→こちらからお気軽にお問い合わせください。