
MAのシナリオ設計とは?効果を上げるポイント
MAツールを活用してシナリオ設計を行うことで、マーケティングの効果を高めることが期待できます。この記事ではMAのシナリオ設計と効果を上げるポイントについて、活用例を踏まえながら見ていきましょう。
顧客の購買行動の変化や企業課題によりマーケティング部門ではMAツールの導入が必要不可欠になりつつあります。
ただツールを導入しただけで、機能を最大限活用できていないのはもったいないことです。
しかし実際、どのように機能を活用すべきか分からない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、MAツールを活用したシナリオ設計の方法と、効果を上げるためのポイントを詳しく解説していきます。
MAで効果的なシナリオを設計するには
シナリオ設計とは、顧客が自社の商品やサービスに興味を持ち、コンバージョンするまでの過程の筋書きを立てることです。
なぜMAツールでシナリオ設計をすることが重要なのでしょうか。
それは、「優秀な営業マンが感覚でやっている追客プロセスをシステム化できる」というMAの強みを最大限活かすためです。
優秀な営業マンは、打ち合わせの際に取引先と話した内容から、「この会社は◯月頃に新規事業を検討するのか」「◯◯さんという上司がシステム導入のキーパーソンなのか」といったことを、漏らすことなく活用することで成約率を上げます。
提案の際の資料も、顧客の温度感やピンポイントのニーズに合わせて作ることで、案件化までスムーズに進めることができるのです。
この営業テクニックを属人化させず、誰でも再現できるのが、顧客データを管理して活用するMAツールなのです。
MAツールの効果を最大に引き出す「シナリオ設計」のコツをお教えするため、まずはMAの基本情報から解説いたします。
MA(マーケティングオートメーション)とは
MA(マーケティングオートメーション)とは、企業の売上向上を目的としたマーケティング活動を自動化するツールのことです。
MAツールには、
- 顧客情報を収集し蓄積・管理する
- リード顧客へのアプローチを最適化し確度の低いリードを育成する
- シナリオにそって、ベストなタイミングでリード顧客へのメール配信
- マーケティングの費用対効果を可視化し成果分析を実施する
といった機能があります。
これらを活用することでリード顧客のニーズを把握し、購買意欲に合わせた最適なタイミングでアプローチを行うことが可能になります。
また、人力でマーケティングメールを配信することに比べて人為的なミスが発生しない、自動化されているため24時間365日対応可能というメリットもあります。
MAにおけるシナリオ設計の重要性
マーケティングを行うには、データ分析力やコミュニケーション能力、情報収集能力が必要です。すべてを人力のみでカバーするのは難しいことであり、優秀な人材に業務が偏りがちです。
顧客のデータを一括で管理し、検討状況の変化などに素早く反応できるよう、MAツールを導入する企業が増えています。
導入して便利な機能を活用するだけでも、マーケティングの効率化は図れるかもしれませんが、生産性は向上しないでしょう。生産性を向上させより継続的に成果を上げるには、シナリオ設計が欠かせません。
MAツールで顧客への連絡が自動化されて便利!で終わるのではなく、これまで培った営業ノウハウを活かしてシナリオを設計し、そのシナリオに沿ってMAツールを運用することが大切です。
顧客がコンバージョン(再CV)に至るまでの筋書き
シナリオは顧客が自社の商品やサービスの導入に至るまでの筋書きです。
映画やドラマに筋書きがないと、思うように話が展開しないのと同じで、マーケティングでも筋書きが重要です。
顧客が今どのような状況か、どのようなことを検討しているかを正確に分析しなくては、見当違いで独りよがりな提案をしてしまう危険性があります。一度でも顧客との信頼関係が崩れると、せっかく育成したナーチャリングの過程も全て無駄になってしまいます。
優秀な営業マンのアンテナ感度を、チーム全員が持つことができるのがMAツールの強みです。
いつ、何を実行するのかを設定するためのシナリオ作りを始めていきましょう。
MAのシナリオ機能で出来ること
MAのシナリオには様々な機能があり、それぞれの機能は異なる強みを持っています。では、具体的にMAのシナリオ機能で出来ることについて見ていきましょう。
設計したシナリオに応じてメールを配信
設計したシナリオに応じて、顧客にメールを自動的に配信するのはMAの基本機能の1つです。
居住地や年齢、過去の利用・購入歴といった顧客の個人情報、メールの開封率、自社サイトリンクのクリック・アクセス回数などをMAの機能で検出することができます。
それを基に顧客の属性やニーズ、行動パターンに応じて、事前に設計したシナリオに沿ったメールを自動で配信します。
こういった作業はこれまで人の手で行われていましたが、MAを活用することでそういった手間がなくなり、マーケティングの生産性・効率性を向上させることに加え、その後のインサイドセールス・フィールドセールスが円滑に進むことが期待できるでしょう。
顧客のリアクションに合わせてシナリオを分岐させる
リードにメールを配信すると、顧客はそれぞれ異なった行動をとります。
メールを開封した後に、添付してあるリンクにアクセスする顧客や、メールを開封しても特にアクションがない顧客など様々なパターンが想定されるでしょう。
シナリオ設計には、こういった顧客の異なるリアクションに合わせてシナリオを分岐させるという機能があります。この機能によって、リンクにアクセスした顧客には電話などで直接コンタクトを取る、アクションがない顧客には内容の異なるメールを再送信するなど複数の分岐を設定することができます。
MAのシナリオ設計をする手順
それではさっそく、シナリオ設計を始めていきましょう。
まずは、シナリオ設計の基本的な手順について見ていきます。
基本の手順を踏まえて、自社のサービスやスタイルに合わせてカスタマイズをしていきましょう。
1.ペルソナの設定
ペルソナとは、自社商品やサービスにとって理想的な顧客像です。こういった顧客を今後もターゲットにしたいと考える人物像をできるだけ具体的に設定しましょう。
MAのシナリオでは、誰に商品・サービスを提供するか、ターゲットが設定されています。この「誰に」に当たるのがペルソナです。
ペルソナを設定することで、繰り返し行う顧客分析から顧客への理解を深めることができるため、企業目線に固執しないニーズに沿った発想がしやすくなります。
2.カスタマージャーニーの作成
リード顧客が企業の商品やサービスに興味・関心を持ち、最終的な利用や購入に至るまでには心理・行動の変化があります。これらの動きを時系列で視覚化したものをカスタマージャーニーといい、直訳すると「顧客の旅」という意味があります。
カスタマージャーニーは顧客ごとに異なるため、作成する際には実際に顧客と関わりのある複数の担当者とヒアリングすることで、顧客が購買に至るまでのパターンをいくつか想定することができるでしょう。
MAのようなツールの発展により、顧客に対して様々なマーケティング施策を打ち出すことができる現在は、どんな施策にもカスタマージャーニーの作成が効果を発揮します。
3.シナリオの作成
ペルソナの設定とカスタマージャーニーの作成ができたら、いよいよシナリオ作成が始まります。
リードのニーズに沿った最適なタイミングで、コンテンツの配信ができるようなシナリオを設計しましょう。MAのシナリオ設計をするうえで抑えたいポイントについては次の項目で詳しく説明しますが、「どのような状態の顧客に」「どのようなタイミングで」「どんなコンテンツを」「どうやって配信するか」最低限この4つを抑えることが基本になります。
MAのシナリオ設計をするうえで押さえたいポイント
MAはマーケティング活動を自動化するツールと前述しました。これだけ聞くと勝手にマーケティングを行ってくれると勘違いする方も多いですが、実際には人の手でシナリオを設計する必要があります。
シナリオを設計する際は「誰に」「いつ」「何を」「どのように」の4つのポイントを抑えることが重要です。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
誰に(ターゲット設定)
アプローチするターゲットを設定しなければ、マーケティングの方向性が不明確になってしまいます。
ターゲットを設定する際にはまず、蓄積された個人情報を基に、
-
顧客ライフサイクル軸
…これまでの企業との関係性から、新規顧客・見込み顧客・既存顧客に分類 -
顧客行動軸
…過去の商品購入歴や自社サイトリンクを踏んだ回数など行動ごとに分類 -
顧客属性軸
…年齢・性別・居住地域といった属性ごとに分類
この3つの軸で顧客をグループごとに分類します。
それぞれの軸ごとに顧客が複数の分類にまたがることはありませんが、軸単独ではなく複数を組み合わせる場合があります。
どのグループにアプローチするか考え、次はそのタイミングを検討しましょう。
いつ(タイミング設定)
シナリオが始まる出来事と、それが生じた後にどのタイミングで顧客の対応をするか決めましょう。
ターゲット設定が的確でも、頻繁にメールを配信したことで顧客が鬱陶しさを感じていたり、アプローチが時期尚早だった場合は顧客が離れていくこともあるため注意が必要です。
特に確度が低い、または低かった顧客に対してタイミングを間違えてしまうとリードを育成した時間が無駄になることも考えられます。
顧客の決断意欲が高まるタイミングは必ず存在します。最適なタイミングを見極めることがマーケティングの成功につながるはずです。
タイミングが設定できたら、次は内容を考えていきます。
何を(コンテンツ内容設定)
コンテンツ内容は、顧客のニーズにマッチしたものに設定する必要があります。
その際、顧客と企業の関係性から内容を考えることができます。例えば、新規顧客の場合、企業に対する信頼度や親近感を感じるような内容にしてロイヤリティを高めます。優良顧客の場合、すでに企業との関係性が構築されているため、それを維持できるような内容を考えましょう。過去に関係性を持ち、しばらく利用がない休眠顧客には休眠状態から復活を促す、または現状維持できるような内容が良いでしょう。
内容設定まで終わったら、最後にどのようにアプローチするかチャネル設定を行います。
どのように(チャネル設定)
アプローチ手段になるチャネルには様々なものがあります。
具体的な例として、メールやWEB広告などのオンラインチャネル、コールセンターやセミナーなどのオフラインチャネルなどが挙げられます。それぞれのメリット・デメリットを踏まえたうえで適切なチャネル設定を行うことが重要です。
シナリオ設計の具体例3パターン
ここまでシナリオ設計の手順や押さえておくべきポイントについて解説してきました。
ここからは実際にシナリオ設計の具体例3パターンを見ていきます。
自社で発生している事例と比較し、活用できそうなケースはぜひ参考にしましょう。
「今すぐ顧客」にポップアップ表示
「今すぐ顧客」とは、リードの中でも緊急性があり商品やサービスに対して強い必要性を感じている、またはすぐに購入・利用を検討している確度の高いホットリードを指します。
例えば、何度もWEBサイトに訪問しているものの、問い合わせや資料請求にいたっていないリードがいたとします。このリードは商品・サービスの購入・利用を検討している可能性が極めて高く、シナリオ設計で効果的なコンテンツを配信出来ればすぐにでも顧客獲得につながることが期待できます。
こういったリードに対しては、WEBページの一番手前に表示されるポップアップ広告で商品・サービスを印象付けることが効果的です。
特定のページを閲覧したユーザーにセミナー案内
特定のページを閲覧したユーザーに、セミナー案内を送ることもMAツールで自動化できます。
どのページに設定するかは、シナリオ次第です。
例えば、自社で開発するクラウドサービスがあり、リードが導入事例を紹介したページを閲覧しているとします。このリードは導入後のことも考えている可能性が高く、それなりにサービスに関心を持っていることが想定されます。
このようなリードに対しては、導入にあたって何か不安なことや不明なことがある可能性があります。クラウドサービスの導入・運用に関するセミナーの参加案内を配信してみましょう。
いかにユーザーの「痒い所に手が届く」アプローチができるかが、シナリオ設計の腕の見せ所です。
休眠ユーザーにステップメールを配信
過去に自社の商品やサービスを利用したことがある休眠ユーザーは、新規顧客よりもアクションを起こしやすいです。興味・関心を突くようなステップメールを配信してみましょう。
また、なぜ休暇ユーザーになったか調査することも重要です。忙しくて商品やサービスを利用する時間がなかった、しばらく休んでいたがすぐに利用再開を検討していた、こういった顧客はステップメールの効果を受けやすいです。
しかし、競合他社を利用していた場合は簡単に戻ってきてくれないかもしれません。
カスタマージャーニーにそった複数パターンのステップメールを作成し、定期的に異なった内容のステップメールを配信しましょう。
効果的なシナリオ設計に必要なものとは?
ここまでで、MAツールの便利な機能と、シナリオ設計の重要さは理解していただけたかと思います。
ここからは、さらに効果的なシナリオ設計をするために必要な要素をご紹介いたします。
中長期的な見通しでシナリオを設計
顧客の購買意欲や、商品・サービスへのニーズは日々変化します。
そのため、最初に考えていた筋書き通りにシナリオが進むとは限りません。一つの施策で顧客が契約・商談まで至らない、途中でシナリオ設計の不備に気づくといったことも起こり得ます。
このような事態を避けるため、中長期的な見通しでシナリオを設計するよう意識しましょう。
場合によってはシナリオの途中であっても柔軟に作り変えていく必要があります。一度設計したシナリオに固執せず顧客の反応によってシナリオを見直しましょう。
豊富な顧客データを活用する
豊富な顧客データの活用は、MAのシナリオ設計で重要なことです。
どのようなルートで入手した顧客情報であっても、一括で保管・管理ができるようにMAツールを活用しましょう。オフラインであれば名刺交換、オンラインであれば問い合わせフォームや資料請求の情報などです。せっかく豊富な顧客情報があるのに、紙とデータでバラバラに管理されている状況では、組織的なマーケティングのためのシナリオ設計に活かすことができません。
キラーコンテンツで強みを作る
自社サイトなどにキラーコンテンツを設けて、強みを作ることも効果的なシナリオを設計するために必要なことです。キラーコンテンツとは、特定分野の普及のために集客力のある情報やサービスを指し、顧客の「買いたい気持ち」に大きく影響するコンテンツです。
具体的には商品紹介ページ、導入事例、顧客(お客様)の声、専門家の見解や評価、調査データやアンケート結果などがこれに該当します。それぞれを見た時の顧客の反応を分析し、より効果的なキラーコンテンツを見つけてシナリオに導入しましょう。
顧客の数、商品の数だけシナリオがある
顧客は商品やサービスの購入・利用に至るまで異なる心理変化があると前述しました。
つまり、顧客の数、商品の数だけシナリオが存在するということです。それぞれの顧客に合ったシナリオを設計するためには、ターゲット設定の時点でターゲットの属性や行動を分割するセグメント設計を行いましょう。
ターゲット設定はシナリオ設計のファーストステップであり、セグメント設計がマーケティングの成功を左右すると言っても過言ではありません。
まとめ
現代のIT技術を駆使したマーケティングには、営業的な発想・思考が求められています。
冒頭でも説明したように、顧客の温度感や状態を素早く察知し、それに合わせて最適なコンテンツを配信するのがこれからのマーケティングです。
同じ内容のチラシをばら撒くようなマーケティングを続けていては、見込みのある顧客まで離れていってしまいます。MAツールを用いた一歩先のリード獲得を始めていきましょう。
MAのシナリオ設計について、もっと詳しく知りたい方は、こちら までお気軽にお問い合せください